「誰かが自分のことを陰で笑っている。畑にあるはずのない木が立っている。二階の窓の外に人影がみえる。自分に誰かがささやいている。自分が考えていないようなことが、次々に頭に浮かんでくる。」患者との話であるが、最初は1時間で一言、二言しか話をせず、ときどき思い出したようにふくみ笑いを浮かべていた。精神科での治療では効果がなく、頼って私の所へやってきた。話をやっと聞き出したところ、背後に超有名な進学校時代の、先輩からのいやがらせが、患者の精神的不安を作り上げる結果となった。しかも、生真面目さも手伝い、そのことから気持ちを切り離すことができないことで、統合失調症へ発展していった。弁証は肝気鬱擾心証と判断して投薬し、その後、幻聴、幻視のために開竅薬を併用し、完治に至った。