漢方専科

PHARMACY HAGIWARA

メディカルエステ

Cuore HAGIWARA

(53)睡眠障害を漢方で治療

71歳の男性ですが、今年の3月から一睡もできなくなってしまい、薬を飲んだものの依存症になるのが怖いと30㎞離れた所からわざわざ相談に来られた。
奥様はもう30年も統合失調のため精神薬を服用されており、今年の2月中旬にめまいがして薬が変わった頃から、ご主人への言い方がきつくなり、ガンガン言うようになった。あまりに言うので口応えもしてついやりあってしまい、そのあたりからどうもよく眠れなくなり、体もだるくなってしまったというのである。
病院には、3月上旬にかかり、処方されたルネスタは2時間で目がさめてしまい、ハルシオンは0.25㎎を1錠や2錠にしたが良く眠れない。今はレンドルミンが処方されており、夜9時半に休むが、2時間で目が覚め、夢をみながら朝5時から5時半まで寝ているらしい。
ところが、飲みだしてから胸に違和感があり、胃ももたれ、耳にもツーンとくる
症状や、何かするにも全く興味がなくなってしまった。また薬に対する依存症にもなりたくなく、睡眠導入剤を減らせたらと相談に来られた次第である。
全く興味がなくなってしまったという気力がなくなっている点、だるさ、寝ても夢を良く見ること、胃のもたれ感などから、心脾両虚証(漢方でいう心と脾の力が落ちている)と判断し、漢方薬を二週間分お出しした。
二週間後には、レンドルミンは半分にしているが、以前よりよく眠れているという。遊びに出かけようかという気持ちも出てきたという。また、耳のツーンとしていたのもなくなった。
さらに、レンドルミンを4分の1、8分の1と徐々に減量し、40日後にはレンドルミンを中止するに到った。
これからは患者さんがきちんと眠れているか、五臓の様子をみながら、漢方薬を減らす段階に入る。漢方では精神は五臓にあると考え、睡眠も五臓によってコントロールされていると考えている。
眠れない時に用いる漢方薬は、薬の力で眠らせるのではなく、患者さんが眠れなくなっている原因は五臓にあると考え、その五臓の症状を見極めながら漢方薬を選択して治します。
睡眠薬が常習性になるというのは、単に眠らせることに重点があり、本来の原因である五臓を治すものではないので、常習ではなく、薬の力で寝ているだけのことなので当然といえば当然のことなのです。
むしろ、眠らせることに重きがあるので、本来の脳の働きまで眠らせることになってしまうと、自分らしさがなくなったり、将来認知症などになる可能性もありうると思います。
できれば、睡眠薬と縁が切れることをめざしていただきたいものです。認知症になってしまってからでは遅すぎますから・・・。